新コーナー紹介!「マタタビ紀行」:予期せぬ縁談?①
みなさんこんにちこんばんは、夜鳴猫です。洋楽を歌うコツ、の続きをお待ちの方にはすみませんが、ここでいったん違うコーナーを挟もうかと思います。
題して「マタタビ紀行」!
既にご存知の方もおられるでしょうが、僕は時折調査のために海外に行っております。あくまで「調査」のため、基本的には自分が関心を持つテーマについて情報を集めることが目的です。しかし、それはいつも僕にとって「旅」でもあります。直接自身の研究に関わりのないこと、必ずしも学術論文の形にはおさめられないことも含め、そこには新鮮な出来事が満ちているのです。
今も例年であれば調査に出ている頃合いですが、生憎と今年は調査渡航もできず、代わりに文献研究や執筆にいそしむ日々を送っています。そんな中、時折旅の空が恋しくなり、かつての渡航の際におこった出来事について振り返ることもあります。
「マタタビ紀行」ではそうした出来事をもとに、エッセイ調で書いていこう、というコーナーです。ちょっと変わった体験談などもあるので、土産話のようなものだと思って楽しんでいただけたら幸いです。
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——それは僕が調査でタイを訪れていた時のことだった。僕はTさんが運転する車の中で、Tさんからこう聞かれた。
「彼女とは最近どうなの?」
Tさんは、とあるタイの名門大学の先生の奥方だ。以前、彼女の夫である先生が、僕の指導教官と会議のために僕の大学を訪れたことがあった。その折、僕はタイからいらした先生方の案内役を務めたのだが、Tさんは先生の付き添いできているものの、会議には直接参加できる立場ではなかった。
そこで僕はその待機時間にTさんの応対をしたり、会議終了後にTさんの買い物のお手伝い、簡単な通訳をしたりと、まあ要はちょっとした接待をしていた。
それでえらく僕に好感を持ってくれたTさんは、「チェンマイ(タイ北部の古都)に来たら必ず連絡しなさい!おいしいご飯に連れていってあげるよ。」と気前よく言ってくれ、以来チェンマイを訪れる際はまるで親戚のようにお世話になっている。
——Tさんが僕に彼女の話題を振ったのはその前に僕にタイ人の恋人がいたため、そのことをTさんにも話していたからだ。ところが僕がチェンマイを訪れ、Tさんに食事をご馳走になったその一か月ほど前に、僕はその人とは別れていた。
「いや、実は別れちゃったんですよね」
当時、まだ僕にとってその別れは生傷だったので、努めて明るく笑いながら言ったのを覚えている。Tさんは驚いていたが、僕の空元気を察してか、それとも僕の拙いタイ語力を鑑みてか、あまり深く詮索するようなことはしなかったが、
「じゃあ、私がいい人を紹介してあげよう。あなた、タイ人の女性はきれいだと思う?」
急に、と思うかもしれないが、この手のやりとりは僕が知る範囲タイの地方ではそう珍しいことではない。さらに山村に行けば「〇〇族の文化を研究しているのかい?なら〇〇の娘と付き合うのが一番いいさ」なんて言われることもままある。そしてそういう時は決まってノリのいい返事をすると場が盛り上がるものである。そのためこの時も、(まあ、よくあるフリよね)と合点し、ノリよく「ぜひ紹介してください!」と返事をしてしまった。
今思うと、先の失恋で自棄になっていた節もあったろうが、ともかくその時点ではちょっとしたジョーク、あるいは果たされぬ口約束に過ぎないだろうと思っていた。
「その時点」では…。
〈次回に続く〉
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